人生の中で、失敗も、挫折も無い、という人はいないか、ごくわずかでしょう。成功体験のみの人が、他人の痛みや傷を診て上げられるかどうかは別に、私から言わせますと、素晴らしいというより、人間関係を築けないのではと心配になります。この成功体験のみというのは、素晴らしいことでも立派なことでもないからです。自分が傷つかないと、他人の痛みは分かりません。自分が経験しないと腑に落ちることに対しても抵抗があるでしょう。
こうした諸々(もろもろ)の経験から、思い上がったり、拗(す)ねてみたり、傲慢(ごうまん)になったりして、世間をにぎわすことにも繋がります。これではいけないとか、こうした方が良いとかの方法論も出てきます。天才でも宿痾(しゅくあ)の所持者でも、心に寂しさを感じるときはあるものだと推量しますが、全くないという人も中にはいますから何とも言えないのです。が、可能なら一度や二度は、挫折や失敗を経験してもらいたいですね。
自身が思っても見なかったことで、他人からの恨みを買ったり、自分の好きな人が他人に取られたりしたら、思いなやむことでしょう。こうしたことがあって始めて、人らしくなって血が通っているなどの評価を得ます。この評価が意外に大事なのです。自信があって、何でもできていながら、他人から信用されない人には、生きた血が通っていないかもしれないですね。
